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​住居にシェアオフィスとシェアキッチンを併設したコンプレックス。シェアを介して家を開き、住宅の枠を超えた循環をつくり出す。社会との距離感を住まいながらに捉えようとする実験の場でもある。

YY

house・office・kitchen

敷地は旗竿状の狭小地で、竿の部分は法規上の最低幅2m、奥まった旗地に建築面積28.7㎡、高さ10mの家が建つ。先端に飛び出た1,400㎜幅の塔状のファサードが、唯一の外観である。

 

土地を取得後、更地の土に触れながら日がな一日スタディするために通っているうちに、小さいながらもいくつかの居場所を発見していった。最終的には敷地を6つにゾーニングして、各々の場所が持つ空気感をそのまま立ち上げたような平面とした。それらを、断面的な密度の緩急をつけながら積み上げていく。硬さの違うミルフィーユ状の空間を束ねたような建築で、わずかな移動で、何層もの空間体験と出会う。天から落ちてくる光がじわじわと地階まで浸透していく様子は美しく、そのなかを路地のような階段で日々上下する生活は、とても伸びやかで心地よい。

 

地下と1階をシェアスペース(オフィスとキッチン)としたので、他人も行き来する、小さな都市の様相のなかで暮らしている。住宅を開くことで、街と地続きの感覚が増幅されて気持ちが豊かになる。他者を招くことで占有空間は小さくなるけれど、息苦しさはない。むしろ様々なメンバーが持ち寄る外の空気が、常に都市の入れ子のなかにいることを認識させるので、家はただ、地球の一角の居場所に過ぎないと思える。

 

2021年、竣工して6年放置していた屋上に、緑のリビングを設えた。上空にひろがる鳥や虫たちのネットワークと接続できて、わが家はようやく地面から空につながった。とても小さい家だが、大地から宇宙につながる壮大な塔を建てたと思うと楽しい。

NetworkSE vol.190 Nov. 2023 「私の家」掲載

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